「ハリーポッターって、映画も原作もおもしろい!」
「呪文が沢山出てきて、わくわくする!」
「作中の呪文は、もしかして大昔の魔法使いが唱えていた本物の呪文なのかな」
ハリーポッターの作中に登場する、迫力満点の魔法や呪文詠唱のシーンにワクワクする方は多いと思います。
「あの呪文って、本物?」と気になったことはありませんか。
中世ヨーロッパには、魔女や魔法使いがひっそりと実在しており、異端視されてキリスト教社会から弾劾されてきたという経緯もありますね。
魔法使いのイメージは持っていても、本物の魔法の使い方や呪文はほとんど知られていません。
そこでこの記事では、ハリーポッターの呪文が本物なのか、過去に存在した魔法使い・魔女たちはどんな術を使っていたのか解説します。
「ハリーポッターの呪文は危険な本物」某図書館がハリポタ撤去
え!?
と耳を疑いたくなるニュースですが、これはアメリカのテネシー州で起きた実際の話です。
(CNN) 米テネシー州ナッシュビルにあるカトリック系の学校が、「ハリー・ポッター」のシリーズ小説について、同書に描かれた呪いは本物だという神父の判断に基づき図書館から撤去した。
ハリー・ポッターを撤去したのはローマカトリック系小中一貫校の聖エドワード・カトリック・スクール。同校のダン・リーヒル神父は8月28日に教職員宛てに送った電子メールの中で、図書館からシリーズ小説を撤去した理由について、こう説明していた。
「同書では善と悪の両方として魔法を描いています。しかしそれは真実ではありません」「同書で使われる呪いや呪文は本物の呪いと呪文です。それが人に読まれれば、その文字を読んでいる人の存在の中に悪霊が呼び起こされる危険があります」
引用元:CNN.co.jpホームページ
…だそうです。
日本人にとっては驚くばかりのニュースではありますが、海外ではハリーポッターに対する評価は賛否両論に分かれています。
1997年に小説が出版されて以来、神秘主義やオカルトなどのテーマがキリスト教やイスラム教の教えに反すると主張する声が上がり、国際的な論争を巻き起こした。2006年には米図書館協会がまとめた21世紀で最もクレームの多い書籍ランキングで筆頭に立った。
引用元:CNN.co.jpホームページ
一部の宗教関係者にとっては、魔法使いや呪文といった要素は教義に背く深刻な問題なのです。
この記事のダン・リーヒル神父は、「作中の呪文は本物である」と明言しています。
どの呪文が本物なの?
ハリーポッターの作中の呪文は100個近くあり、映画限定、ゲーム限定の呪文なども含めると数えきれない状態です。
(原作5巻のカンニング防止呪文など、呪文のセリフが不明な魔法もあります。)
ファン心をくすぐる魔法の数々ですが、これらの呪文のうちの、一体どれが本物なのでしょうか!?
ところが、上記の記事の宗教関係者は、「この呪文が本物」といった明言はしていないようです。
まあ、人々に呪文の影響を与えないために書籍撤去しているわけですから、わざわざ「これが本物ダヨ!」なんて言って興味をあおるわけないですかね…
一方、公式情報によれば、ハリーポッターの作中で登場する呪文は、作者J.K.ローリングの創作によるものだそうです。
呪文のほとんどがラテン語由来の造語で、複数の造語を組み合わせたものもあります。
呪文の語源については、ハリーポッターの情報サイト、ポッターマニアの語源辞典に記載されています。
というわけで作中の呪文は、少なくとも、昔の魔法使いたちが実際に唱えていた呪文ではありませんでした…
残念…
使ってみたい魔法3選
ところで皆さん、もしも魔法が使えるならば、どんな種類のものを使ってみたいですか?
何かこう、闇魔法みたいなの
— POKERFACE_RUU🎤💛 (@PokerfaceRuu) May 25, 2020
使ってみたかった。
もしくは獣に変身したい。
人生一度でいいから
魔法使いたくないですか?
使えるなら何魔法使います?
私のセミナーでも、「妖精と会いたい。どうやったら、会えるんですか」と聞かれることが多いけど、そう質問している人の多くは、本当は信じていないんじゃないかしら。ゲゲゲの水木しげるさんになった気分で、もっと自由に、自然の精霊たちと話してみてください。
引用元:Tree of Heart for you 杉原梨江子公式ブログ 聖なる樹の言の葉たち
といったコメントから見えるように、
- 浮遊魔法(空を飛びたい・ものを空に飛ばしたい)
- 変身魔法(動物や他人に変身したい)
- 召喚魔法(精霊などに会いたい)
このあたりが人気の魔法なのではないでしょうか?
そこで、「浮遊」「変身」「召喚」の3つの魔法について、ハリーポッターではどんな呪文あるいは手段が用いられているのか見ていきたいと思います。
さらに、歴史上の本物の魔法使い、魔女たちが、どんな呪文や方法でこれら3つの魔法を使っていたのかについても、ご紹介したいと思います!
ハリーポッターの「浮遊」「変身」「召喚」
では、ハリーポッターの世界ではこれらの魔法はどのような呪文や手段で実現されるのか、見ていきましょう。
ハリーポッターの浮遊呪文
ウィンガーディアム・レビオーサ (Wingaradium Leviosa)
Wingaradiumは英語Wing「翼(をつける)、飛ぶ」とラテン語arduus(高い、険しい)の合成語、Leviosaの語源はラテン語levio(=levo、上げる、軽くする)。意味は「高く飛んで上がれ」
引用元:ポッターマニア ハリーポッター語源辞典
ハリー・ポッターが最初に学んだ呪文の一つで、物体を浮遊させるための呪文です。
ホグワーツ1年目にフリットウィック教授から教わっていました。
ちなみにハリーポッターの作中では、魔法使い自身が空を飛ぶときに唱える呪文というのはなく、飛行手段はもっぱら、魔法のほうきです。
レビコーパス(Levicorpus)という身体浮上の呪文はありますが、あれは宙づりにする呪文なので、浮遊とはちょっと違いますね。
ハリーポッターの変身魔法
ハリーポッターの通うホグワーツ魔法学校には、「変身術」という授業があり、低学年から上級学年まで、難易度に応じた変身術を学んでいきます。
呪文一つで簡単に動物に変身できる!というシステムではなく、変身術の授業では、
- レパロ(Repaeo)直れ;壊れたものを直す呪文
- スポンジファイ(Spongify)衰えよ;ものを柔らかくする呪文
- デューロ(Duro)固まれ;ものを硬くする呪文
など、物質の状態変化を主に扱っているようです。
…うーん。でもそれって、私たちが持つ「典型的な変身魔法」のイメージとは違うような。
いえ、存在しています。
魔法使い本人が誰かに変身したい場合は、呪文ではなくポリジュース薬という薬品を調合します。
制作工程は複雑で、満月の夜にしか取れない材料などもあるのでけっこう手間がかかります。
ポッターポータルというサイトに詳しい製法が載っています→こちら
また、動物に変身できるのは、動物もどき(アニメーガス)という動物変身能力者だけで、習得するのはかなり難しいとされています。
変身術の教授であるミネルバ・マクゴナガル先生は、一瞬で猫に変身できる極めて優秀な魔法使いです。
というわけで、ハリポタ世界では変身魔法はお手軽簡単とはいかないようですね。
ハリーポッターの守護霊を呼ぶ魔法
エクスペクト・パトローナム(Expecto patronum)
ラテン語Expectro「期待する、待ち望む」の一人称単数形+ラテン語patoronus「救世主、霊、守護の聖者」の対格で、「私は守護霊を待ち望む」の意。
引用元:ポッターマニア ハリーポッター語源辞典
これはとても有名な呪文ですね!
この呪文が初めて使われたのは、シリーズの第三巻「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」でした。
その人物が最も幸せな記憶を思い浮かべることで、吸魂鬼から身を守ることができます。
吸魂鬼の邪悪な力に対抗し、打ち勝つという高難易度の呪文です。
本物の魔法使い・魔女の「浮遊」「変身」「召喚」
創作ファンタジーの世界とは異なり、呪文一つで簡単に魔法が使えるわけではありません。
魔法の儀式や呪文は秘匿され、一般人に知ることはできませんでした。
中世ヨーロッパ時代の魔法使い・魔女は、様々な儀式、段取りを経て、魔法や呪術を行使していたといわれています。
はい、実在していました。
しかし、現在の私たちが物語の中で思い描くような、明るく華やかで魔法を容易く発動できるような存在ではありません。
彼らは隠者であり、俗世との交わりを避けて、ひっそりと隠れ住む存在でした。
また、中世暗黒時代には、いわれのない一般人が『魔女・魔法使い」と貶められて魔女狩りなどの異端狩りに遭うこともありました。
本物の空を飛ぶ魔法
飛行用の軟膏を作成し、ほうきと自分自身の身体に塗布して浮遊したといわれています。
呪文ではなく、薬の力で空を飛ぶのです!
17世紀の悪魔学者ジャン・ド・ニノーが考案した飛行用の軟膏の材料は、ベラドンナや猫の脳でした。
当時にも魔女が空を飛ぶなどというのは迷信だと言う人もいましたが、多くの人々は事実だと信じていました。
魔女の軟膏の成分が幻覚を引き起こして、魔女本人が浮遊したと思い込んでいたという説もあります。
本物の変身する魔法
1662年にスコットランドで魔女裁判の被告となったイザベル・ガウディの、ウサギに変身する呪文をご紹介します。
我兎とならん、悲しみ、嘆き、憂い多きウサギに我<悪魔>が軍門に下らん、再び家に戻る時まで。
引用元:図解悪魔学 F-FILES No,027 草野巧著(新紀元社)2013
ぱぱっと呪文で一瞬のうちに変身してしまいたいところですが、けっこう長くて難しい呪文でした。
また、動物に変身する軟膏もあり、ヒキガエル、ハリネズミ、蛇などを材料として用いたといわれています。
このあたりの材料は、まさに魔女って感じですよね。
本物の悪魔を召喚する魔法
一例ですが「大奥義書(グラン・グリモワール)」という魔道書に収載された、悪魔大臣「ルキフゲ・ロフォカレ」を召喚する際のソロモン王の大呪文をご紹介します。
霊よ!われは偉大なる力の以下の名においてお前に銘ずる。速やかに現れよ。アドナイの名において、エロイム、アリエル、ジョホヴァム、アクラ、タグラ、マトン、オアリオス、アルモアジン、アリオス、メムブロト、ヴァリオス、ビトナ、マジョドス、サルフェ、ガボツ、サラマンドレ、タボツ、ギングア、ジャンナ、エティツナムス、ザリアトナトミクスの名において。(以下繰り返し)
引用元:図解悪魔学 F-FILES No,027 草野巧著(新紀元社)2013
…この呪文を一語一句間違えずに二度繰り返さなければいけないそうですが、そんな荒業が達成できるくらいなら局アナか落語家にでも転職したいところです。
召喚するにも、ただ呪文を言えばよいわけではありません。
正確な魔法陣を描き、しかも魔方陣の素材には子ヤギの皮やら血玉髄や火桶や木炭、樟脳などなどたくさん必要です。
ハシバミの枝で作った魔法の杖も用意してください。
…本物の魔法って、ものすごく大変ですね。
まとめ
- ハリーポッターの呪文が本物だと訴えて、図書館から撤廃した学校がアメリカに実在する
- ハリーポッターの呪文は作者の創作であり、本物の魔法使いが使っていたものではない
- ハリーポッターの魔法にくらべて、かつて実在した魔法使いが使っていた魔法はかなり面倒くさい
以上、ハリーポッターの呪文が本物かどうかについてお伝えしました。
本物であろうと創作であろうと、この物語の奥深さ・おもしろさにはまったく関係ありませんよね。
美しい魔法の世界に酔いしれて、秋の夜長にハリーポッターを楽しんでみませんか?