「錬金術では、金を作るだけじゃなくて、不老不死の薬も作ろうとしていたんでしょ?」
「どんな作り方?不老不死の薬なんて、本当にあったの?」
そんな疑問をお持ちの方、いらっしゃるのではないでしょうか!?
実在した錬金術では、金を作るだけでなく、不老不死薬エリクサーを手に入れようとする試みもありました。
この記事では、残存する記録からエリクサーの作り方を紹介し、現代でも入手可能なエリクサーについてもご紹介します。
エリクサーってどんなもの?
エリクサー(elixir)は、錬金術によって合成される、飲むと不老不死になると伝えられる万能薬です。
エリクシール、エリクシル剤などと言われることもあります。
エリクサーは、賢者の石を液体化した物質です。
エリクサーを飲むとどうなる?
どんな病気でも治る
永遠の命が手に入る
16世紀にスイスに実在したパラケルススという医師(兼、錬金術師)がエリクサーを用いて医療活動を行っていたという伝説があります。
また、15世紀の錬金術師ニコラス・フラメルや、18世紀のサンジェルマン伯爵も、賢者の石を作り、不老不死を手に入れたと言われています。
- ニコラス・フラメル
- サンジェルマン伯爵
賢者の石を作った実在の錬金術師については、こちらの記事もどうぞ⇒【実在した錬金術師5選】これだけ知ってれば錬金術通!
錬金術によるエリクサーの材料と作り方
不老不死薬エリクサーの材料は、賢者の石です。
賢者の石を液体上に変化させると、エリクサーになります。
また、賢者の石そのものをエリクサーと呼ぶ場合もあります。
賢者の石とは
錬金術師が目指す究極の物質
【能力】どんな金属でも金に変換することができる
【形状】通常、赤い石の形をしている
不老不死薬エリクサーを作るためには、まず材料として賢者の石を手に入れなければなりません。
しかし、賢者の石の正確なレシピは残されてなく、また、賢者の石が実在したという公式の記録は残っていないのです。
そのため、錬金術薬のエリクサーの作り方は、残念ながら不明です。
エリクサーの材料である賢者の石の作り方については、非公式ではありますが、何人かの錬金術師が記録を残しています。
賢者の石の作り方は、こちらの記事をどうぞ⇒【錬金術】『賢者の石』の作り方~真実のレシピ紹介~
賢者の石を手に入れることができれば、液体化して(どうやって液体にするかの記録はないのですが)、不老不死薬エリクサーを作ることができるでしょう。
19世紀に実在したエリクサーの作り方
謎に包まれた不老不死薬エリクサーですが、2014年5月にアメリカ・ニューヨーク市のホテル建設現場で、19世紀のエリクサーのボトルが発見されたそうです!
アメリカの「DNAinfo New York」の報告によると、ドイツ式ビアガーデンの跡地で、150年前に貯蔵されていた古い酒瓶の山の中から、「長寿の秘薬(Elixir of Long Life)」と書かれた小さな緑がかった色をしたガラス瓶が見つかりました。
瓶の中身は空っぽでしたが、考古学者アリッサ・ルーリャ氏がエリクサーを再現することを決意。
彼女は19世紀の医薬書などの資料を調査し、当時のエリクサーのレシピを探し当て翻訳することに成功しました。
そのエリクサーのレシピは、以下の通りです。
■長寿の秘薬・エリクサーのレシピ
・材料
アロエ 13g
ルバーブ(大黄) 2.3g
リンドウ 2.3g
白ウコン(ホワイトターメリック) 2.3g
サフラン 2.3g
水 118ml穀物アルコール(ウォッカ、ジン) 355ml
・作り方
1.アロエを絞る
2.ルバーブ、リンドウ、サフランを潰す(ミキサーも可)
3、全ての材料を混ぜる
4、頻繁にかき混ぜながら3日寝かせる5、コーヒーフィルターなどで濾した後、ボトルに詰める
※個人の責任においてお試しください(文=Maria Rosa.S)
参考:「DNAinfo」、「NBC News」ほか
引用元:exciteニュース 不老不死の秘薬 ― 19世紀の「エリクサー」 がレシピと共に蘇る(2014年6月27日)
そうなんです…残念ながら、これは本物の錬金術によるエリクサーではなく、ただのお酒だったのです!
薬草成分を混ぜたお酒(薬酒)を「エリクサー」あるいは「エリキシル」と名づけ、カクテルや健康飲料の一種として売るのは、よくあることでした…
amazonでもエリクサーを手に入れることができますよ。
ご参考までに…
シャルトリューズのエリキシルは修道院で製造される薬草酒の銘柄で400年の歴史を持ち、その製法や材料は門外不出となっています。
これもひとつの、「謎に包まれたエリクサー」と言えるのではないでしょうか。
日本に実在するエリクサー
最後に、日本に実在する2つの「エリクサー」をご紹介しましょう。
…結論から言ってしまうと、本物の錬金術薬エリクサーではありませんので、悪しからずご了承ください。
日本薬局方収載の「エリキシル剤」
日本の医薬品の規格基準書である「日本薬局方」に、エリキシル剤が載っています!
日本薬局方は100年あまりの歴史があり、初版は明治19年6月に公布され、今日まで医薬品の開発、試験技術の向上とともに改訂され続けている権威ある文書です。
1.5.1. エリキシル剤
引用元:厚生労働省「日本薬局方」ホームページ
Elixirs
(1) エリキシル剤は,甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口液剤である.
(2) 本剤を製するには,通例,固形の有効成分又はその浸出液にエタノール,精製水,着香剤及び白糖,そのほかの糖類又は甘味剤を加えて溶かし,ろ過又はそのほかの方法によって澄明な液とする.
デキサメタゾンエリキシル0.01%や、デカドロンエリキシル0.01%、フェノバールエリキシル0.4%などが実在しています。
薬の主成分をエタノールに溶かして作るのが、日本の医療でいうところのエリキシル剤なのです。
資生堂の化粧品「エリクシール」
1983年、肌とコラーゲンの関係に着目して誕生した資生堂の化粧品エリクシール。
以来、40年近くの間、資生堂のエイジングケアの主力商品となっています。
「エリクシール」の語源は錬金術薬のエリクサー(エリクシール)。霊薬、万能薬といった意味があり、エイジングケアの先端技術と有用成分を凝縮してまるで秘薬のように化粧品の瓶に詰め込みたいとの想いから名付けられたそうです。
資生堂の人気化粧品シリーズ、エリクシールの名前は錬金術のエリクサーが由来だったのです。
まとめ
- 錬金術薬エリクサーを飲むと、病気が治り、永遠の命が手に入る
- エリクサーは、錬金術の究極物質「賢者の石」を液体化にして作る
- エリクサーの作り方は不明である
- エリクサーと名付けられたお酒や薬、化粧品はたくさん実在する
エリクサーの材料である賢者の石が手に入らない以上、残念ながら、私たちが本物のエリクサーを作るのは不可能と言えるでしょう…
しかし錬金術の名残として、エリクサーと名のつく商品や医薬品を、現代日本で見ることができるのは、おもしろいですね。
数千年の錬金術の歴史と本物のエリクサーに思いをはせながら、身近なエリクサーを手に取ってみてはいかがでしょうか?