プロレスラー同士の関係は複雑です。
時にはライバルとして、時にはタッグパートナーとして試合を盛り上げています。
その中でも、橋本真也選手と小川直也選手の関係はとても複雑です。
因縁のライバルであり、盟友だった2人の関係をこの記事では紹介します。
共に戦った期間は10年もありませんでしたが、2人の間には濃密な時間が流れていました。
橋本真也選手と小川直也選手を簡単に紹介
橋本真也選手とは
小川選手と初めて試合をした1997年当時の橋本選手は、新日本プロレスの看板レスラーでした。
96年の4月に新日本プロレスの至宝であるIWGPヘビー級チャンピオンを戴冠。
1年以上も防衛し続け、ミスターIWGPとして団体を引っ張っていました。
小川直也選手とは
高校生の時に柔道を始めた小川選手。
大学時代に頭角を現し、1992年のバルセロナ五輪に出場し見事銀メダルを獲得します。
96年のアトランタ五輪後に現役を引退。
翌97年にアントニオ猪木選手と佐山聡選手が設立した「UFO」に入団し、格闘家へと転身します。
そんな小川選手のプロレスデビューの相手が橋本選手でした。
橋本選手と小川選手のライバル関係
デビュー戦は橋本選手
小川選手のプロレスデビューは破格の扱いでした。
97年4月に行われたデビュー戦の相手は、IWGPヘビー級チャンピオンの橋本選手。
橋本選手の重いキックに苦戦していましたが、変形の大外刈り（STO）を決めグラウンドでの裸締めで勝利。
デビュー戦で現役のチャンピオンから勝利をもぎ取りました。
この試合の結果、翌月の大阪ドームでIWGPヘビー級選手権試合が決定。
試合は小川選手の側頭部へキックを決め、橋本選手がリベンジを果たします。
この頃の小川選手は柔道着を着て試合をしていたこともあり、プロレスラーというよりは柔道家の印象が強かったです。
1999年東京ドーム 1.4事変
プロレス史に残る不穏な試合が行われたのが、99年1月の東京ドーム大会です。
入場の花道を歩く小川選手は、以前の小川選手とはまるで別人でした。
柔道着を脱ぎ、黒のショートタイツに足元はレガース。
体重を落としスリムになった体は、総合格闘家の肉体へと変化していました。
目を見開いて臨戦態勢の小川選手は、橋本選手のリングへの入場を待ちきれずに
「橋本！死ぬ覚悟があるのなら、リングに上がって来い！」
1999年1月4日 小川直也
と、絶叫します。
試合相手の入場時にマイクパフォーマンスをするのは、プロレスではありえない行為です。
それを、柔道家として頂点を極めた小川選手が行ったことに観客は動揺します。
不穏な空気が流れる中で始まった試合も異様な光景でした。
東京ドームという大きな会場にもかかわらず、橋本選手をロープ際に詰めて細かいパンチを繰り出す小川選手。
会場全体に伝わる大きなプロレスをしたい橋本選手と、明らかに橋本選手を潰しに来ている小川選手の試合は、まったくかみ合っていませんでした。
試合中に鼻を骨折した橋本選手の顔面は血まみれ。
試合を裁くレフリーもダウンし、制御ができない状態で小川選手が歴史に残るマイクアピールをします。
オイオイオイ、冗談じゃねえぞ、オラ！ 新日本プロレスのファンの皆様、目を覚ましてください！
1999年1月4日 小川直也
この発言をきっかけに、新日本プロレス・UFOそれぞれのセコンドがリングになだれ込み、試合は無効試合となってしまいます。
ドームに詰めかけたファン、リングに上がって混乱を収めようとしたレスラー、おそらく橋本選手も何が起きているのか理解できない試合でした。
この試合をきっかけに、橋本選手と小川選手に因縁が生まれます。
小川選手、橋本選手を引退に追い込む
99年10月に行われた試合で再び破れた橋本選手は、自身のレスラー人生をかけて小川選手に挑みます。
2000年4月7日。
東京ドームで行われた試合は「橋本真也34歳、小川直也に負けたら即引退！スペシャル」と銘打たれた試合でした。
橋本選手は頭を丸坊主にし、小川選手の必殺技「STO」の対策を行いましたが、小川選手を止めることはできませんでした。
試合終盤に小川選手はSTOを6連続で決め、橋本選手をノックアウト。
試合後に橋本選手は引退を表明し、現役を退きます。
橋本選手の復帰、新団体を設立
プロレスを引退した橋本選手でしたが、ファンの後押しもあり現役復帰します。
新日本プロレスに復帰し、団体の中に新日本プロレスから独立した団体「プロレスリングZERO」を作ろうとしますが長州選手らの反対にあい計画は失敗。
その結果、橋本選手は新日本プロレスから退団してしまいます。
直後に新団体「ZERO-ONE」を旗揚げし、社長兼レスラーとして団体を引っ張る立場となりました。
旗揚げ当初は勢いがありましたが、徐々にZERO-ONEは集客面で苦戦していきます。
そこに手を差し伸べたのが、自身を引退に追い込んだ小川選手でした。
小川選手をプロレスラーとして引き上げたのは橋本選手です。
そんな橋本選手のピンチに小川選手は駆けつけます。
橋本選手と小川選手は「ＯＨ砲」として
- ZERO-ONE
- 全日本プロレス
- ハッスル
で共闘し、プロレス界を盛り上げる活躍を見せてくれました。
まとめ
2005年7月。
橋本選手は脳幹出血のため、息を引き取ってしまいます。
その年の大晦日に行われた「PRIDE 男祭り 2005」のメインイベントに小川選手が出場。
花道を入場する小川選手のテーマが、橋本選手の入場テーマ「爆勝宣言」に変わった瞬間、小川選手は唇をかみしめたように見えました。
2人は因縁のライバルとして、そして信頼しあったタッグパートナーとして、リングの中で暴れまわっていました。
最後まで読んでいただきありがとうございました！
