「凶器を使用しても反則にならない」という、プロレス独自のルールであるデスマッチ。
この記事では、デスマッチのルールと試合を紹介します。
- 爆破
- 有刺鉄線
- 脚立
- 蛍光灯
などなど、過激な試合です。
早速見ていきましょう!
デスマッチの紹介
本来デスマッチは、完全決着をつける試合形式でした。
「時間無制限」というルールをデスマッチと呼んでいたのですが、現在は「凶器攻撃OK!」という意味合いでデスマッチを使用します。
この記事では、凶器攻撃ありの試合形式を紹介します。
ランバージャック・デスマッチ
ランバージャックデスマッチとは
- 場外にセコンドのレスラーが待機している
- 選手が場外に落ちたら、セコンドはすぐリングに上げなくてはいけない
- リング上で完全決着するルール
プロレスはリングから降りて場外に出ても、時間内であれば反則にはなりません。
しかしランバージャック・デスマッチは、場外へのエスケープを禁止するルールです。
両陣営にセコンドが付き、レスラーが場外に降りたらすぐにリングに戻します。
常にリング上で試合をするという、テンポの良い試合形式です。
この試合のルーツは、カナダの木こり(ランバージャック)同士が揉めてケンカになったときに使用していたルールでした。
2人を他の従業員が取り囲み、完全に決着がつくまで戦うという過酷なケンカです。
ランバージャックデスマッチを日本に持ち込んだのが、アントニオ猪木選手。
1973年にタイガー・ジェット・シン選手との試合で、日本初のランバージャックデスマッチで戦いました。
猪木選手はシン選手以外にもザ・シーク選手、ラッシャー木村選手ともランバージャックデスマッチを行っています。
本来は「中立な立場のレスラーがリングを取り囲む」というルールが、時代とともに変わっていきます。
現在はユニット同士の完全決着ルールに変化し、リングを取り囲むセコンドがどれだけ試合に介入できるかが勝敗を左右します。
EVILvs石井智宏
2022年2月13日、新日本プロレスでの試合です。
EVIL選手と石井選手の選手権試合は、ランバージャックデスマッチルールで行われました。
NEVER無差別級チャンピオン、EVIL選手のセコンドには
- 高橋裕次郎選手
- SHO選手
- ディック東郷選手
チャレンジャーの石井選手のセコンドには
- 後藤洋央紀選手
- YOSHI-HASHI選手
- YOH選手
合計6人の選手がリングを取り囲み、試合が行われます。
EVIL選手が所属する「HOUSE OF TORTURE」はヒールユニット。
もちろんルールは守りません。
対戦相手の石井選手が場外に降りたら、全員で攻撃をする。
仲間のEVIL選手が場外に降りたら、全員で取り囲みEVIL選手のダメージ回復のために時間を稼ぎます。
場外戦を駆使して試合を優位に進めるHOUSE OF TORTUREですが、意外な人物が試合の流れを変化させます。
EVIL選手らのヒールファイトに怒りをため込んでいた浅見レフリーが、EVIL選手の顔面に張手をカマします。
一時は石井選手のペースに持ち込んだのですが、総力戦を制したのはEVIL選手。
序盤からのセコンドのサポートが、試合後半に活きた試合でした。
天龍源一郎vs上田馬之助
1983年3月1日、全日本プロレスでの試合です。
天龍選手と馬之助選手のランバージャックデスマッチは、試合序盤はセコンドが場外に降りた2人をすぐにリングに上げていました。
とてもテンポの良い試合でしたが、試合終盤はやはりユニット抗争に変化します。
セコンドではないタイガー・ジェット・シン選手が会場に乱入。
自身がオトリになり、天龍陣営の注意を引きます。
そのすきに鶴見選手がスパナを馬之助選手に渡し、天龍選手をめった打ち。
天龍選手の額が切れてしまいました。
試合は馬之助選手が凶器攻撃による反則負け。
ヒールユニットがランバージャックデスマッチで試合をすると、完全決着がつかないことは多々あります。
ブルロープ・デスマッチ
ブルロープデスマッチとは
- お互いの手首にロープを巻き付ける
- ロープの中央に鉄製の鐘(カウベル)がつくと、テキサスブルロープ・マッチとなる
- 試合によってロープの太さが違い、細ければ細いほど危険
レスラー同士の手首にロープを取り付けて戦う試合を、ブルロープ・デスマッチといいます。
お互いがロープでつながっているので、近距離での攻防が多くなります。
綱引きのように相手を引き合う攻防や、不意にロープを引くことで相手のバランスを崩すことが可能。
基本的には反則ですが、ロープを凶器として上手く使用できるかが勝負の分かれ目です。
より過激なルールでは、ロープの代わりに有刺鉄線を巻いて行った試合もあります。
鈴木みのるvs矢野通
2017年11月5日、新日本プロレスでの試合です。
当時NEVER無差別級チャンピオンだったみのる選手が所持するベルトを、矢野選手が強奪。
ベルトを盗み逃走する矢野選手を、みのる選手がロープで捕まえるというストーリーです。
お互いの手首にロープを巻き付けるというルールですが、矢野選手はロープにつながれるのを拒否。
そのまま矢野選手の奇襲攻撃で試合を開始しますが、セコンドのデスペラード選手と金丸選手によって阻止されます。
お互いにロープでつなぐこと以外は、通常のプロレスルールです。
セコンドの介入は反則なのですが、矢野選手のルール拒否もありレフリーは見逃しています。
試合中は、お互いにロープをうまく使用した攻防を見せてくれました。
ダウンした矢野選手を、みのる選手がロープで引きずりまわす。
みのる選手の首にロープを巻き付けた状態で場外に落とし、矢野選手がリング上からしめ上げる。
矢野選手がロープを引き寄せみのる選手のバランスを崩し、パイプ椅子で殴打(椅子は反則です)
さまざまなロープの使い方で、ファンを楽しませてくれました。
最後はみのる選手が「スリーパーホールド→ロープで首をしめる→ゴッチ式パイルドライバー」で矢野選手を3カウント。
見事にベルトを取り返しています。
ジュース・ロビンソンvsヒクレオ
2021年9月26日、NJPW STRONGでの試合です。
以前から抗争を繰り広げていた2人の決着戦は、テキサス州ダラスでの「テキサスブルロープ・マッチ」でおこなわれました。
通常より少し細めのブルロープの真ん中にカウベルがついた状態での試合。
しかもこの試合は、時間無制限のノーDQマッチ。
反則無しでの完全決着ルールです。
2021年当時はベビーフェイスだったジュース選手ですが、ロープ攻撃のバリエーションは豊かでした。
ヒクレオ選手がリングから降りる無防備な瞬間に、ジュース選手がロープを引っ張る。
そのままコーナーポストに叩きつける攻撃は見事でした。
この試合は、ロープを引いて障害物に当てるという攻防が多かったです。
最後はジュース選手が、ロープについているカウベルでヒクレオ選手を殴打。
そのまま首にロープを巻き付けてのキャメルクラッチでレフェリーストップ勝ちでした。
試合を解説した永田裕志選手も、ジュース選手のロープの使い方を称賛しています。
敗者髪切りデスマッチ
敗者髪切りデスマッチとは
- 負けた選手はバリカンで丸坊主にされる
- 男子レスラーよりも女子レスラーのほうが負けたときのリスクが高い
- メキシコでは覆面と髪の毛を同時に懸ける「カベジェラ・コントラ・マスカラ」というルールもある
試合に負けたレスラーが、頭を丸めるというルールです。
男子よりも女子レスラーの方が精神的に追い詰められます。
何人ものレスラーがこのルールで頭を丸めましたが、有名な試合は長与千種選手とダンプ松本選手の一戦です。
1985年に大阪城ホールでおこなわれた試合。
当時人気絶頂だった長与選手は、試合に敗北し、髪の毛を失いました。
時間無制限、敗者髪切りデスマッチルールで行われた試合は、ダンプ松本選手のノックアウト勝利。
負けた長与選手が椅子に固定され、バリカンで髪を切られてしまいます。
取り囲むセコンドは「本当に切るのか?」と混乱。
会場に詰めかけた長与選手のファンは泣き叫び、壮絶な空気となった試合です。
この試合の影響もあり、女子プロレスの完全決着戦では、敗者髪切りデスマッチが行われるようになりました。
ジュリアvs中野たむ
2021年3月3日、STARDOMでの試合です。
「ワンダー・オブ・スターダム選手権試合&敗者髪切りマッチ」としておこなわれた試合で、2人は令和の髪切りデスマッチを見せてくれました。
チャンピオンのジュリア選手に挑戦する中野たむ選手。
「お前、髪の毛を懸けられるのか?」
と、ジュリア選手からの要求に、中野たむ選手が答える形で試合が決定しました。
ベルトと髪の毛を賭けた試合は、壮絶な試合です。
ジュリア選手が机の上にパイルドライバーで突き刺せば、中野たむ選手がコーナートップから場外へプランチャ・スイシーダを敢行します。
試合終盤の張り手合戦を制したのは、中野たむ選手でした。
最後はスタイナースクリュードライバーでジュリア選手の後頭部をマットに突き刺し、フィニッシュのトワイライトドリームで3カウント。
見事にベルトを奪取します。
試合後は「やっとあんたに勝てた。もう何もいらない。だから髪を切らなくていい」
とジュリア選手をかばいますが、ジュリア選手は覚悟を見せてくれました。
「恥かかせるなよ!」
と、マイクを返し、バリカンを手渡します。
ジュリア選手は美容師の手によって丸坊主にされますが、中野たむ選手が一言
「ずるいよ、オシャレじゃん」
と、コメントしたことで、会場の空気が一気に和らぎました。
長与選手とダンプ松本選手のような殺伐とした試合ではなく、STARDOM10周年記念という興行をポジティブに締めたデスマッチでした。
ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ
ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチとは
- ロープの代わりに有刺鉄線を巻く
- 有刺鉄線に触れると爆発する
- 1990年代に盛んに行われたデスマッチ
ロープの上に有刺鉄線を巻きつける「カリビアン・バーブドワイヤー・デスマッチ」という試合形式を、大仁田厚選手が大きく進化させました。
ロープに電流を流し、小型爆弾を設置。
触れたら爆破させるという、見た目にも派手な試合です。
90年代に盛んに行われ、FMWを始め、新日本プロレスでもこのルールで試合が行われました。
電流爆破デスマッチはさまざまなルールでおこなわれ、たくさんのレスラーが被弾しています。
電流爆破デスマッチから派生したルール
- 有刺鉄線バリケードマット地雷爆破デスマッチ
- 有刺鉄線電流地雷監獄リング時限爆弾デスマッチ
- ノーロープ有刺鉄線電流爆破超大型時限爆弾デスマッチ
- 水中機雷爆破デスマッチ
90年代のデスマッチ業界は、大仁田選手が所属していた「FMW」と、松永光弘選手やミスター・ポーゴ選手が所属していた「W★INGプロモーション」という2つの団体が争う構図。
両団体がお互いを意識し、より過激さを求めて危険な試合が行われた時代でした。
大仁田厚・長与千種組vsTARU・ダンプ松本組
2015年5月23日、超花火プロレスでの試合です。
史上初となる「男女混合電流爆破デスマッチ」は、爆弾付きバット、爆弾付き椅子、フォークなどがリングに持ち込まれるという、壮絶な試合でした。
レスラーが被弾した瞬間は、会場の電気が一瞬消えたように見えるほどの大きな爆破です。
男女関係なく爆破に巻き込まれ全員がフラフラの状態でしたが、最後は長与選手がTARU選手を抑え込み3カウント。
初代爆破王のベルトを手にしました。
この試合は、長与選手とダンプ松本選手という全日本女子プロレス時代髪切りデスマッチの因縁もあり、会場には当時のファン(親衛隊)もたくさん押し寄せています。
長与選手がダンプ松本選手に攻撃されるシーンでは、1980年代当時と同じように、ファンが長与選手を応援していたのが印象的でした。
グレート・ムタvsグレート・ニタ
1999年8月28日、新日本プロレスでの試合です。
「ダブルヘルデスマッチ」と銘打たれた試合のリングは、まさに地獄のリングでした。
2箇所のロープには有刺鉄線が巻かれ、触れれば電流爆破。
もう2箇所のロープは取り外され、場外には有刺鉄線を巻いたマットが敷き詰められています。
そしてコーナーには時限爆弾のスイッチがあり、ボタンを押してから60秒後にすべての爆弾が爆破するという仕掛けです。
この試合はグレート・ムタ選手とグレート・ニタ選手が試合をするというインパクトと、すべての爆弾が爆破したときのインパクトが強烈でした。
野外会場なので火薬の量も多く、爆破時はリングの中心に火事のような煙が昇っていました。
蛍光灯デスマッチ
蛍光灯デスマッチとは
- ロープに蛍光灯をくくりつけて試合を行う
- 1997年に松永光弘選手によって考案されたルール
- 現在はLEDライトの普及により、蛍光灯が不足している
リング上に蛍光灯を持ち込み、相手を蛍光灯で叩くというルールです。
蛍光灯の魅力を、佐々木貴選手は
- 真空管が割れる時の「ボンッ!」という破裂音
- 不気味に舞う煙
- 割り方はレスラーの自由なのでセンスも問われる
と、インタビューで語っています。
試合をしているレスラーはもちろん、蛍光灯が割れると、レフェリーや客席にも蛍光灯の破片が飛び散ります。
長袖長ズボンはもちろん、リングサイドで観戦する場合は、目を保護するゴーグルなどの着用をおすすめします。
宮本裕向・石川勇希組vsドリュー・パーカー・伊東竜二組
2022年2月5日、大日本プロレスでの試合です。
蛍光灯デスマッチの魅力は、試合が進むごとにリング上に蛍光灯の破片が積み重なっていき、技をかける方も受ける方もリスクが上がることです。
試合序盤はきれいなリングなので通常のプロレスですが、蛍光灯が割れていくとリングには破片が飛び散ります。
マットに叩きつけられるだけでも背中に破片が突き刺さり、レフリーがカウントを叩くときには、飛び散った破片がライトに照らされてキラキラ光ります。
そのような状況でも、石川選手やドリュー・パーカー選手はコーナートップから飛んでいくレスラーです。
石川選手が変形のフットスタンプで飛べば、ドリュー・パーカー選手はスワントーンボムで試合を決めます。
高さのある場所から蛍光灯まみれのリングに飛んでいく姿を見るために、ファンは会場に足を運びます。
蛍光灯デスマッチの危機?
2013年に、水銀による汚染防止を目的とした「水銀に関する水俣条約」という国際条約が結ばれ、2020年に発行されました。
この条約により、2017年頃から各メーカーでは蛍光灯の生産が終了し、家庭で使用する照明は蛍光灯からLEDへと変わっています。
2022年現在は「交換用の蛍光灯」のみの生産になっている状況です。
2030年には、すべての照明がLEDへと変更されるので、デスマッチ団体では蛍光灯の確保に苦労しています。
試合によっては、1試合300本もの蛍光灯を使用します。
蛍光灯で観覧者や神社の鳥居、神輿などのオブジェを作成した試合もありました。
「FREEDOMS」でも、ファンに蛍光灯を寄付してもらい、試合を行っているそうです。
今後確実に、蛍光灯デスマッチの試合数は減っていきます。
今のうちに目に焼き付けておいてください。
TLCマッチ
TLCマッチとは
- Tables(テーブル)
- Ladders(脚立)
- Chairs(椅子)
- それぞれの頭文字をとった試合形式
テーブル、脚立、椅子を凶器として試合に持ち込むことが可能です。
相手を攻撃するための道具にも使えますし、脚立をリングに置くことで高さを使った攻撃も可能になります。
リングの中外問わず凶器攻撃が認められており、試合中にどのように使用するのかがTLCマッチの見どころです。
世界最大のプロレス団体WWEではTLCマッチは盛んに行われており、興行の名前としてもTLCを使用しています。
ケニー・オメガvsマイケル・エルガン
2016年6月19日、新日本プロレスでの試合です。
ケニー・オメガ選手とマイケル・エルガン選手は、IWGPインターコンチネンタルベルトをかけてラダーマッチを行いました。
試合のルール
- リングの中央にベルトを吊り上げる
- ラダーを使いベルトを先に奪うと勝利
- ラダーは凶器としても使用できる
この試合は変則のTLCマッチと言える試合でした。
大小のラダーがリングを取り囲み、試合中には数え切れないほどのラダーが破壊されました。
- ラダーを運んでいるエルガン選手にプランチャ・スイシーダで飛びかかる
- エルガン選手の背中にラダーを叩きつける
- ラダーを振り回し、ケニー選手のセコンドを迎撃する
- コーナーに立てかけたラダーにケニー選手を叩きつける
- ラダーの上から雪崩式ブレーンバスター
2人は、これでもか!というくらいの攻撃のバリエーションを見せてくれました。
この試合のハイライトは、場外に設置したテーブルの上に向かってケニー選手をパワーボムで叩きつけた瞬間と、ラダーの頂点にいるケニー選手を場外に叩き落としたシーンです。
技を受けたケニー選手の身体能力がなければ、かなり危険な攻防でした。
試合はケニー選手を場外に落としたことで無人のリングとなり、エルガン選手が無事にベルトを奪取しました。
棚橋弘至vsKENTA
2022年1月5日、新日本プロレスでの試合です。
ノーDQマッチと銘打たれた試合でしたが、この試合もTLCマッチのような試合を見せてくれました。
ノーDQとは、反則を一切取らないルールで、何をしても良いという試合です。
お互い竹刀を振り回した状態で、試合が開始されます。
リング上に大量の椅子を並べた状態で棚橋選手がスリングブレイドを決めれば、KENTA選手は場内のテーブルめがけて雪崩式ファルコンアローで棚橋選手を叩きつけます。
WWEを主戦場としていたKENTA選手の方が、凶器の使い方には慣れているように見えました。
しかし、勝利したのは棚橋選手です。
リング上に設置した巨大なラダーの上から、KENTA選手めがけてのハイフライフロー。
KENTA選手はテーブルの上に寝かされていたので、棚橋選手とテーブルに挟まれた状態で完全にノックアウトされました。
現在は復帰していますが、試合後KENTA選手は怪我のため欠場に追い込まれています。
まとめ
デスマッチは過激な試合形式です。
レスラーの中でも、一握りのレスラーしかこの領域にはたどり着きません。
刺激を求めているあなた。
1度試合を見てみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます!