長州選手は数々の事件を起こしていますが、1982年10月8日の「噛ませ犬事件」はファンの間でも有名な出来事です。
この試合で、タッグパートナーの藤波選手に向けて言ったといわれている
「俺はお前の噛ませ犬じゃないぞ!」
は、長州選手の名言の1つです。
実際は、リング上で発言した言葉なのか、その後のインタビューでのコメントなのかは不明となっています。
しかし、長州選手の人気が爆発したきっかけは、間違いなく「噛ませ犬事件」です。
当時の長州選手と、後に「名勝負数え唄」を繰り広げた藤波選手の関係を紹介します。
長州力 噛ませ犬事件とは
まずは当日行われた試合を振り返ります。
長州力、10・8後楽園ホールでの凱旋試合
噛ませ犬事件が起きたのは、長州選手がメキシコ遠征から帰国後すぐの試合でした。
遠征中にメキシコの英雄、エル・カネック選手からUWA世界ヘビー級王座を奪取。
ベルトを獲得という実績を引っさげて帰国しましたが、ライバル藤波選手とのレスラーとしての差は埋まっていませんでした。
当時の新日本プロレスは、猪木選手が中心です。
藤波選手は、1978年にアメリカでWWWF(WWF)ジュニアヘビー級王座を獲得して日本に帰国。
女性や子どもからの人気も得てドラゴンブームを巻き起こします。
一方、長州選手は、無骨なファイトで華やかさにかける、中堅選手という位置づけでした。
海外遠征でベルトを取ったにも関わらず、藤波選手よりも格下の扱いを受ける。
そんな気持ちが爆発した試合が1982年10月8日、後楽園ホールでの試合です。
試合前に行うリングアナウンサーのコールは
- 長州力
- 藤波辰爾
- アントニオ猪木
の順番です。
格下のレスラーから名前のコールを受けるのですが、自分が藤波選手よりも先にコールされたことに対して、長州選手はクレームを付けます。
藤波選手も、長州選手の暴走に困った表情を浮かべています。
試合前の合同練習でも、長州選手は藤波選手に対してあたりが強かったそうなのですが、2人は試合そっちのけで小競り合いを開始。
本来ならば、試合の先発を買って出るのは長州選手の役目です。
しかし、長州選手は試合に出ようとしません。
あきれた藤波選手は、自ら先発として試合を組み立てます。
試合中もお互い噛み合わないだけでなく、対戦相手そっちのけで仲間割れを起こします。
観客、実況席、対戦相手のブッチャー組、タッグパートナーの猪木選手も混乱した試合でしたが、藤波選手が飛びつき回転エビ固めで3カウント。
しかし試合後に大きな事件が起こります。
キレる、長州力
3カウントを奪った藤波選手に対し張手を3発、ボディスラムでマットに叩きつけます。
スーツ姿の新間営業部長とミスター高橋レフリーを突き飛ばし、藤波選手に対して何かを叫んでいます。
長州選手の魂の叫びはマイクを使用していなかったので、テレビ放送では拾えていません。
観客の声援や怒号が激しく「長州選手が怒っているんだ」ということしか、当時のファンもわからなかったと思います。
しかし、長州選手の迫力は凄まじく「この男が何かを変えてくれる」という期待を持たせる行動でした。
長州力と藤波辰爾
長州選手と藤波選手の経歴を簡単にまとめました。
長州力 | 藤波辰爾 | |
生年月日 | 1951年生まれ | 1953年生まれ |
プロレスデビュー | 1974年 新日本プロレス | 1971年 日本プロレス |
学生時代の経歴 | 専修大学レスリング部キャプテン ミュンヘンオリンピック出場 | 中学卒業後に就職 |
その他 | アマレスのエリート | 温厚な性格 |
年齢は長州選手の方が年上ですが、プロレスラーとしては藤波選手のほうが先輩です。
藤波選手は、中学卒業後に「猪木選手の付き人」という形で、日本プロレスに入団しました。
格闘技の経験もなく、猪木選手からは「なんだい、この坊やは?」といわれていたそうです。
一方の長州選手はレスリングでオリンピック出場。
全日本チャンピオンの経験もある、エリートです。
そんな選手がプロに入ってから8年もの間、一切ブレイクしませんでした。
噛ませ犬事件後のインタビューでは
ここで自分を主張できなかったら、僕は一生 ”かませ犬” のままで終わってしまうんですよ
長州力
というコメントを残し、精神的に追い詰められていたことを告白しています。
まとめ
この後に行われた長州選手と藤波選手のシングルマッチは「名勝負数え唄」として語り継がれています。
「WWFインターナショナル・ヘビー級王座戦」の試合に勝利したあとには
俺の人生にも一度くらいこんなことがあってもいいだろう
長州力
と、藤波選手から勝利したよろこびを表現しています。
長州選手の引退試合でも、対角線には藤波選手がたっていました。
生涯のライバル関係となったきっかけの事件が、噛ませ犬事件です。
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